次男が、ある動画を見せてくれた。
多分、昼下がりの空いている電車の車内で、隠し撮りされたと思われる動画。
サラリーマン風の男性が、床にへたり込んで、絶叫している。
数年前、どこかの県議会の議員さんが、みっともなく号泣会見したけれど、それを彷彿させる泣きっぷり。
もう、発狂状態と紙一重の泣きっぷりで、周りの乗客がさりげなく席を移動して、遠くから様子を眺めている。
車掌さんらしき人と、何か話をしていたが、車掌さんが隠し撮りのカメラ方面に歩き始めると、男性はパニック泣きという感じで、更に大声で泣き叫び、車掌さんの顔が「やれやれ‥」ともとれる表情で動画は終わっている。
どうやら、電車のトイレにスマホを落としてしまい、パニックになり、泣き叫んでいるところを車掌さんが声をかけて事情を聞いてくれたものの、すぐには拾えないという状況らしい。
それにしても、この男性、気の毒。
もしかしたら、買ったばかりで、残債がたっぷりあるのかもしれないし、スマホゲームに課金しまくって、最強アイテムを揃えていたのかもしれない。
その上、見ず知らずの人が、隠し撮りして、ネット上に拡散して、面白おかしくコメントされて、更に拡散されて、次男が、ネットの海から発見したという次第。
この男性も気の毒なんだけど、そこまでパニック泣きしたら、いつどこで、誰がネット上にあげるか、わからない世の中なんだから冷静にならなきゃね。
でも、可哀想だけど。
笑うより、気の毒としか思えない動画なんだけどね。
次男曰く、多分この電車のトイレは、汚物をタンクに吸い込む方式なので、便器の中にスマホを落としてしまうと、シュポッと、タンクにスマホが吸い込まれてしまい、車内からスマホを回収するのは無理で、車庫に入って清掃するまで回収出来ないのではないかという。
つまりは、昔の汲み取りトイレに落としてしまったに等しい状況。(うわぁ)
それで、私が高校生の時の親友のRちゃんの黒歴史を思い出した。
高1の夏休み、林間学校で、R ちゃんが、戦々恐々と入った汲み取りのトイレにパスケースを落としてしまった。
そもそも駅だったか記憶は定かではないけれど、軽井沢の近くだった。
そんな遥か昔でも、汲み取りのトイレは、滅多にお目にかかれないものになっていて、旅行行程上仕方なく、勇気を振り絞って入ったトイレでの惨事。
当時、オーバーオール(今はサロペットというらしい)という胸あてのついたズボンが流行っていて、その胸あてのポケットにパスケースを入れていたのを忘れて、用をたそうとした時、パスケースが、まさに、ぼっとん!
彼女の悲鳴に、駅員さんが駆けつけ、トイレの裏手から長い柄杓で、パスケースを救出してくれた。
駅員さん、ダメもとでチャレンジしてくれていたようで、一緒に喜んでくれていた。
そして、長いトングのようなもので掴んで水洗いしてくれた。
でも、『ぼっとん』の中に数分滞在しただけで、パスケースは黄色っぽく変色し、素手で触るには、かなりの勇気がいる。
駅員さんはゴム手袋をして、丹念に水洗いしてくれたのだけど、パスケースは、ご臨終。
パスケースの中から、学生証と通学定期券を取り出してくれたが、縁が黄ばんでいる。
彼女は、夏休みも部活で学校に行くつもりなので、定期券は9月いっぱい有効だった。
当時は、紙の定期券だから、あまりゴシゴシ擦る訳にはいかず、雑巾でまわりを拭いて定期券と学生証をビニール袋に入れて渡してくれた。
駅員さん曰く、パスケースは捨てるしかないけれど定期券は事情を話せば再発行してくれるはずだから‥と、とても親切にしていただいた。
R ちゃんは、大袈裟なぐらい感謝していた。
‥と、いうのも。
定期券と学生証の間に憧れの先輩の写真を挟んであったから。
ホントは、定期券や学生証なんて二の次で写真の無事を確かめたい。
だけど、ビニール袋を開けると、超絶臭い。
勿論、家に帰宅するなり、速攻で、先輩の写真の安否を確認。
証明写真より少し大きめというサイズが幸いして黄ばむこともなく無事。
だけど、やっぱり臭くて、部屋で陰干ししたり悪戦苦闘したらしい。
私達友人は、『えんがちょ(もしかしたら死語?)写真』と言って、イジリ倒したけれど、今みたいにスマホやケータイで簡単に写真が撮れるという時代ではなく、体育祭か、何かで、その他大勢として偶然写った先輩の写真を切りとって宝物にしていた貴重な写真。
ちょっと、うん◯臭くても捨てるなんてとんでもない。
‥と、Rちゃんには黒歴史だけど、懐かしい出来事を思い出した。
話は、戻って、気の毒な動画のサラリーマン風の男性。
結局、どうなったのかな?
清掃時に、運良く回収してもらって、受け取りに行ったのかな。
防水機能がバッチリな機種なら、どうにか生き延びているかもしれないから、データを移すとかは、何とかなるかもしれないけれど。
半端なく、臭そう。
修理に出しても、関わる人みんなが困り果てる嫌がらせ兵器と化していそう。
きっと、スマホ本体は諦めるしかないと思うけれど、写真や、大事なデータや、お財布機能まであるから、スマホを落としたら、やっぱり泣き叫んじゃうかも。
今回の消費税増税では、合わせてキャッシュレスも進めようとしているのを、ヒシヒシと、感じるけれど、スマホには、更に何とかペイもダウンロードする人が増えて、
ますますスマホは、真の貴重品。
データのバックアップとか、万が一の対策をちゃんとしておかないと、あの気の毒なサラリーマン風の男性は、明日は我が身かもしれない。