はじめの1歩

子育て終了、時間と心の余裕が出来たのでイロイロ手を出してみます。

 魔法の手帳

昨年、大阪に旅行に行った時のこと。

USJや神社仏閣の拝観料が半額や免除されたり。

『まさに魔法の手帳だよね。』

ちょっと不謹慎なんだけれど、魔法の手帳の正体は身体障害者手帳

次男は、聴覚の障害があり、4級と判定されている。

この手帳を示すと、他に電車賃も一定距離以上だと割引がある。

その他も補聴器の助成などの支援もある。

聴覚障害って、見た目には分からないし障害としては軽いと思われているフシがあるがそんなことはない。

検査、訓練、医療費、高額な補聴器、電池‥。

ちゃんと聞こえていればかからないお金や努力や時間がかかっているのだから、有り難く手帳の恩恵は受けようねと、思っている。

 

次男の難聴が発覚した時、彼は3歳だった。

お医者さんや、聴力検査や補聴器のフィッティングをしてくれるST(言語聴覚士)の先生方は、みな同じことを言った。

『もう少し早く気がついていたら、普通の小学校に行けたのに。』

責められていると思った。

確かに、聞こえが悪いかも?と思った事は何度もあった。

でも、音には反応していたし、正常であって欲しいというバイアスがかかっているせいか、そのうち喋ると、信じていたし、信じようとしていた。

頑張れば普通の小学校に行ける可能性があるよという慰めをお医者さんやSTの先生がしているのかな。

また、普通の小学校、中学、高校‥と進むことが障害の克服の証であるかのようなメッセージにも聞こえていた。

 

次男は訓練施設を経てろう学校で中学まで学んだ。

年子の長男の学校関係の人に、次男がろう学校に通っていることが伝わると、地雷を踏んだかのような顔をされることがあった。

お気の毒に‥と、アンタッチャブルな扱いをされたり。

そのせいか、いずれは、聞こえている人の世界で暮らすんだから、親は、可能性があるなら早めに普通の学校へ行くほうが良いという考え方になってゆく。

確かに、ろう学校在校生となると、聴覚障害者を受け入れたことがないところは、やたらとハードルが高い。

小学校入学時点で、普通の小学校を検討したのだけど、教育委員会の判定は、『お母さんが頑張れるなら許可。』

どうしても、聞こえが悪い分、学習面でつまずくから、親の責任でフォローしろってこと。

小学校なんて努力して頑張って行く所だと思っていなかったので、勿論こちらから却下。

この時は、本人は、お兄ちゃんと同じ学校にも行きたい気もするけれど、ろう学校も楽しいという状態だった。

もしかしたら普通の学校至上主義になりかけていたのが、親の方だったのかなあと思った。

 

小学校に入ったとき、スイミングスクールを申し込んだが、安全面の不安から断られたこともあった。

高校からは、普通の高校に行ったが、英語のリスニング試験の対応から、受験の可否から相談するようにと、平然と言ってくる私立高校もあった。(そんな高校、こっちからお断りだけどね。)

 入学した高校では、初めての聴覚障害者だったので、先生も手探り状態。

1番驚いたのが、聴覚障害であることを周知してよいか、確認されたこと。

周知も何も、補聴器してるし、障害を隠して聞き間違えからトラブルになるのが、1番怖いのだけど。(補聴器は万能ではないのだ)

 

でも、1番しっかりしていたのが本人だった。

補聴器していてもちゃんと聞こえていないアピールを自らしていた。

障害者手帳も『魔法の手帳』と称して友人に見せていたらしい。

高校1年の遠足が鎌倉だったと思う。

神社仏閣の拝観料が、手帳の掲示で、本人と付き添い1人が割引や無料になることが多い。

その時、自由行動のグループのメンバーが割引の恩恵を平等に受けられるように、順番で組んだんだそう。

その話を本人から聞いた時は、少しウルっとした。

 

小学校でインテグレートした(普通の学校へ通った)友人は、イジメにあったり、結構苦労したようだった。

小学生ぐらいの子供って、ある意味、1番残酷だと思う。

殆どの子供にとって身近ではない補聴器を付けているし、発音に癖があるしどうしても言葉面の遅れがあるのでイジメのターゲットになりやすい。

また、当の本人も、他の子供と違っていることがコンプレックスになってしまう。

大人でもその感情、今なら冷静に理解できるんだけれど。

次男が幼い時にあちこちで言われた、お医者さんやSTの先生の『もう少し早く気がついていたら普通の小学校に入れたのに。』という言葉がずっとひかかっていた。

赤ちゃんの頃から訓練を受けてきた子供の保護者にとっては、普通の小学生に入れるか否かは、教育の効果の親の成績表のように感じているような人が結構いた。

ホントはそんなことはないのに。

次男にとっては、発見が遅れたおかげで、無理にインテグレート(普通の学校に通う)することなく、寺子屋のような環境(少人数で)で、小中学校を過ごした。

お友達もみんな補聴器を付けている。

だから、目が悪い人が眼鏡をかけるように、耳が悪いから補聴器を付けているし、ちょっと大変だから魔法の手帳も持っているんだよ。

これって、ちょっとカッコイイ言い方すると、自身のアイデンティティをちゃんと確立したってことだと思う。

結構たくましく育ってくれたよね、なんて思っている。

今日は、彼のお誕生日。

かなり強引だけど四捨五入すると30になってしまうお年頃。

子供部屋おじさんになる前に、子離れしなくっちゃ。(笑) 

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