はじめの1歩

子育て終了、時間と心の余裕が出来たのでイロイロ手を出してみます。

蝉の初鳴き。

今年も蝉が鳴き始めた。

このところ、殆ど晴れ間がなく、北東の冷たい風が入り込む梅雨寒の日が続いていたので、7月に入っていたことをすっかり忘れていた。

そういえば、アジサイの花も盛りを過ぎていたし、着々と季節が進んでいる。

 蝉といっても、ジーという鳴き声が時々聞こえる程度で、真夏の蝉時雨とは全然違う。

『今日、蝉が鳴いているのを今年初めて聞いたよ。』と、話題にすると数年前の夏の日のことを思い出した。

 

 

次男には聴覚障害がある。

ざっくりいうと約90デシベルの聞こえ。

デシベルというのは、音の大きさを表す単位で、次男の耳は90デシベル以下の音は聞こえない耳ですよということ。

90デシベルの聞こえというのは、目覚まし時計のけたたましいベル音とか、怒鳴り声がやっと聞こえるという耳のこと。

聴力検査では、数種類の高さの音を聞かせて、その平均値で表す。

普通の会話の声の大きさは40デシベル前後、健康診断で異常値とされるのが、30デシベルより大きくしないと聞こえない耳ということなので、彼の音の世界はどうなっているのか、私はあまり想像が出来ない。

 

次男は普段補聴器を付けている。

補聴器をつけて検査した数値も40から50デシベルになっている。

この数字は耳が遠くなったお年寄りのような聞こえのイメージ。

これ以上補聴器で音を大きくしても、かえって聞き取れないとか、素人にはよくわからない部分もあるのだけど、彼にとっては補聴器を使って、やっと耳が遠くなったお年寄り並みの聞こえをゲットしている。

風邪を引いて、何となく鼻が詰まるみたいな状況になると、健聴の人でも聞こえが悪くなってしまうが、それって10デシベルぐらい聞こえが悪くなっている状態。

彼にとっては、その10デシベルの聴力低下で、全然聞き取れなくなってしまうこともあるので、幼い頃は、アレルギー性鼻炎でよく医者通いをした。

耳に関しては、親も本人も普段から気をつけていた。

 

数年前の丁度今頃、『蝉が鳴き始めたね』という会話になった。

やはり、真夏の蝉時雨とは別物の、耳を澄ませば聞こえる程度のもの。

多分、ニイニイゼミだと思うのだけど、ジーと、興味がある人しか気がつかないほどの弱々しさ。

イメージとしては、梅雨の終わり頃から鳴き始め、梅雨が明けると、アブラゼミが元気よく鳴き始めるのでニイニイゼミの声はかき消されてしまっている。

その時、次男が、『何処で聞いたの?』

『少し離れた公園だから、うちの近辺では聞いてないよ。』と答えると、ホッとした表情を浮かべていた。

それから、しばらくして梅雨が明けてぐったりするような暑さが続いていたある日のこと、深刻な顔で次男が言った。

『今年って蝉少ないと思う?』

『いつもと変わらない思うよ』(私はそこまで蝉に興味はないし、何気なく答えていた。)

すると、次男は、数日後、補聴器屋さんに行って、補聴器の点検と、聴力検査を受けてきたという。

『実は、僕、今年は1度も蝉の声を聞いていないから、聴力が落ちたと思って補聴器と聴力検査してもらったんだ。大丈夫だったんだけど、今年、蝉、居ないよね?』

 

『‥‥。』

そうか!彼はこの年、社会人になった。職場が遠く通勤に時間がかかる。

彼の通勤経路に蝉が鳴いていそうな場所は無さそう。

それに、うちの近所も急ピッチで宅地開発が始まっていて、近所の林は駐車場に変わり、大きな木が伐採されてスッキリ日当たりが良くなった場所も何箇所かあった。

確かに蝉が好む環境が近所から減ったし、彼は自宅から最寄り駅に着いた後は、殆ど電車で、職場は駅。

勤務している駅もうちより都会っぽいから(笑)、蝉の鳴き声が聞こえる環境じゃない。

それに引き換え、私は、彼が幼い頃よく蝉取りに行った市営プール脇の桜並木を自転車でかっ飛んで買い物に行ったりしているので、うちの近辺で蝉の声は聞こえなくても、桜並木でうるさいほどの蝉時雨のシャワーを浴びている。

私の答えが不用意だったんだ。

確かに蝉の鳴き声を聞くチャンスは減っていたはず。

 

今でも不思議思うのは、息子達が幼いころ、毎日のように蝉取りに出かけた時のこと。

その桜並木は真夏はお互いの声がよく聞こえないほどのアブラゼミの大合唱。

音のボリュームはとても大きいので、勿論彼の耳にも聞こえているのだけど、

ちゃんとこっちから聞こえる、とか、鳴き声を頼りに蝉を見つけている。

あんなにうるさいのに、音の方向性が分かるのが不思議だった。

でも、秋口になり、夜エンマコオロギがかなり大きな声で鳴いているのに、それは未だにわからないという。

彼は、未だに虫取りはワクワクするらしく、ニイニイゼミが鳴き始めると、もうカブト虫が成虫になった頃かな、なんて必ず話題にする。

そして、あのカブト虫ポイント、まだ健在かなと心配している。

時々、網を持って蝉やカブト虫を取りに行きたいと思うことがあるらしい。

でも、このご時世、いい若いもんが捕虫網持って公園にいたり、夜に懐中電灯もって林に居るだけで、不審者認定されて通報されるよね、と、マジで残念そう。(笑)

『早く結婚して、虫が好きな子供が出来るといいねえ、そしたら一緒に虫取りしていたら不審者じゃなくて、微笑ましいパパさんだよ。』と、ここ数年、蝉の話から結婚の話に飛んでしまって、少し嫌な顔をされている。

 

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近所の公園の花壇もいつの間にか、夏バージョンです。(トレニア)