はじめの1歩

子育て終了、時間と心の余裕が出来たのでイロイロ手を出してみます。

身内じゃなくて良かったね。

昨日、某総合病院での出来事。

遠くから、内容は聞き取れないものの文句っぽい口調の話声が近づいて来た。

その声はどんどん近くなり、声の主は、足が悪そうなおじいさん。

遠目に髪は黒々としていたのだけど、背中は曲がり軍手をはめて両手に杖を持っている。

その後ろには表情のない白髪のおばあさん。

そもそも病院の待ち合い室で大声で喋っている人は居ないので、私を含め、その場に居た殆どの人が、見て見ぬふりをしている。

幸い、椅子は沢山あり、ガラガラだった。

 

 

とにかく文句というか、小言の多いじいさんだった。

おばあさんの方は表情が乏しいものの歩き方はしっかりしていたので、

おばあさんは認知症なのかな?などと、見ないふりして観察を始めてしまった私。

今日の病院も空いていて、私を入れて数人がその場に居た。

『俺は足が悪いんだから、もう来ないよ。』

『あー、あっちこっち触るんじゃない。帰ったらまず手を洗えよ。』

『あー、席は1つずつ空けて座るんだよ。あんたは、ここに座って。』

『俺は足が悪いんだから‥』

‥というような感じで同じことを何回も何回も喋り続け、しかも滑舌が悪くて声が大きい。

はっきり言って最悪‥。

おばあさんは相変わらず無表情だった。

 

どうやら診察を受けるのはおばあさんで、受付に何度か呼ばれて、問診票を書くように言われていた。

おばあさんが書こうとすると、じいさんがひったくるように問診票を受けとり、

勝手に書いている雰囲気。

時折、『あの薬、なんだっけ?』などと唐突に聞き、おばあさんが咄嗟に答えられないとイラついた口調で、『こんなもんはテキトーでいいんだよ。』

もう不快指数MAX。

受付の人も見て見ぬふりをしていたが、看護師さんが、おばあさんだけを別室に呼びいれていた。

『付き添いは必要?』と、じいさんはぶっきらぼうに尋ねていたが、看護師さん、にっこり笑って『大丈夫ですよ。』

『看護師さん、good job』多分あの場にいたみんなが同じ思いだっただろう。

 

その後、おばあさんは、診察前にレントゲンが必要らしく、受付の人が説明を始めた。

この病院、最近、大規模な建て替え工事を終えているものの病院内は迷路のよう。レントゲンは別棟の違う階に行かなくてはならない。

その行き方を受付の人が説明しようとすると、なんと、おばあさんが不安そうにじいさんに手招きをしていた。

すると、じいさん、『俺は足が悪いんだ』から始まって、受付の人が説明した内容を大きな声で繰り返し始めた。

その頃、夫も治療を終え、様々な手続きを終えて、帰ろうとすると、運悪く、

くだんのじいさん、おばあさんと同じエレベーターに乗るハメになってしまった。

じいさん、他人とエレベーターに乗り合わせようがずっと喋りっぱなしで、それも、『俺は足が悪いんだ』『あっちこっち触るな』

などと、小言のオンパレードで、同じ空間に居ると気が滅入るほど。

2階でエレベーターを降りて、右に曲がってレントゲン室に行くはずが反対に歩きだそうとしていた。

私と夫は、1階まで行くので、ゆっくり閉まるエレベーターのドア越しにじいさんが逆方向に歩き出す姿を、イジワルな視線で見送った。

 

エレベーターのドアが閉まった瞬間、夫が我慢の限界という感じで、

『なんだ、あのじじい、ずっと小言ばかり喋りっぱなしで、虐待だよな。』

‥と、不快感全開で怒り始めた。

『待っている間じゅう、あの調子だったんだよ。おばあさん、耳悪いのか、認知症なのかな‥と思ったけれど、大丈夫そうだった。』

『あの調子でガミガミ言われたら、無表情になるよね。』

『でも、あもおばあさん、受付の人が長い説明をしようとすると、じいさん呼んだんだよね。もしかして共依存?』

などと、夫婦で勝手な妄想を繰り広げていた。(笑)

 

 

そこで、ふと30年ぐらい昔のことを思い出した。

私が、社会人だった頃、Nさんという『困ったちゃん』がいた。

定年間近で偏屈でイジワルなじいさん。

当時の私の職場は古き良き昭和の雰囲気の社風で、会社のおじさん達は、役職が自分より下でも年長者を立てる人達ばかりだった。

このNさん、まさに天下の嫌われ者じいさんで、女子社員に対しても小さなイジワルを仕掛けてくる。

それに対しても、会社のおじさん達は見て見ぬふりというか、相手せず。

ある時、私が、Nさんに対して頭に来て、多分顔が怒っていたんだと思う。

すると、直属の上司が、『Nさんがお父さんじゃなくて良かったね。あの人、君と同い年ぐらいの娘さんがいるんだよ。』‥と、ニヤリ。

今でも思い出すのだけど、ホントにそう。『身内じゃなく良かった。』

今、ここだけやりすごせばokなんだし‥。

この一言、私にとっては魔法の言葉になり、Nさんに対してあまり腹がたたなくなった。

思い返すと、嫌な思いをした時、『身内じゃなくて良かった』と、思うことで切り抜けてきたことが沢山ある。

私に魔法の言葉を授けてくれたその上司は、熱狂的なカープファンで、よく二日酔いの日は仁丹の香りをぷんぷんさせていたっけ。

‥と、懐かしく思い出して、

あのじいさんに対する不快指数がグッと下がった。

 

 ホント、身内じゃなくて良かった。(笑)

 

 

 

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近所の小さな栗の畑。つい最近地味な花が咲いていましたが、もう小さなイガイガになっていました。