次男は難聴です。
今は新生児の時に検査をしてくれるようですが、いろいろ悪い偶然が重なって難聴を発見した時は3歳の時。
理解語検査では3語。(お父さん、お母さん、お兄ちゃん)
彼の耳は音は多少聞こえているけれど言葉は聞きとれない耳でした。
だから彼の耳の誕生は3歳から。
見事なほど、教えた言葉以外は知らないという状態が続いたものの、語彙は順調に増えていきました。
助詞(て、に、を、は)の使い方も、普通に聞こえていれば自然と入っていくのに、彼は、意識させたり、時には文字を使ってお勉強チックに覚えていきました。
こう書くと凄く大変そうだけど、本人が言葉の存在を自覚すると、人一倍お喋りになっていきました。
ひとつだけ良かったのは、余計な雑音が入らないので、自分の興味があることにまっしぐらというか、先入観なしに入っていくところでした。
そんな彼の印象的な出来事は桜の季節とリンクします。(ちょっとこじつけっぽいかな。笑。)
ろう学校の幼稚園に通っていた頃、先生が心配して仰るのは『折り紙を選ばせると必ず赤をとる』ことでした。
1クラス数名の寺子屋なような環境なので、折り紙を使う時も1セットを分けて使います。
彼のクラスは男児ばかりで、やはり寒色系の取り合いなるので、その生存競争に負けて諦めの赤の選択なのかということを心配されているようでした。
『だって僕は赤が好きなんだもん。』
これが彼の答えで、どうやら本心のようでした。男の子だから寒色系というより、目立つ綺麗な色だから好きなのでしょう。
でも、小学校入学を控えて、ランドセルの話題が出てくると、『僕は赤。』
当時は今ほどカラフルではなく、赤、ピンク、黒、紺、茶色というラインナップでした。 私は、紺色がオシャレだななんて思っていたのですが。
『だってお兄ちゃんが黒だから間違えたらヤダもん。だから赤。』
うーん、これは困った。さすがに赤いランドセルというのは。
でも、お兄ちゃんの一言であっさり解決。『赤は女の子の色だから、オカマになっちゃうよ。』
『違う!僕は男の子。』ということで黒を選びましたが。
なんとなくテンションが低いような。
4月になり学校が始まり送迎の時に満開の桜の木をバックに写真を撮ろうと声をかけると、わざわざランドセルを背負ってポーズを決めてくれたのは、
赤じゃなくても気に入ってくれたのかなと嬉しく思った瞬間でした。
そして、彼が小学校の2年生の時、桜の木の下でのこと。
やはり、親のお迎えを待っていて、新入生の女の子の話をします。
『Nちゃんって、亀に似ていて凄く可愛いよね。』
Nちゃんというのは、ダウン症の女の子。確かに亀に似てるといえば似てるけれど、彼女の親が聞いたらどう思うだろう、いい気持ちはしないよねと、内心は冷や汗ダラダラ。
彼はその数ヶ月前に、お年玉でクサガメを飼い始めてとても可愛がっていたので、
『亀に似て可愛い。』というのは、本心であり、褒め言葉でさえあるのだけど、大人の感覚では失礼だよねと、色んな思いが頭の中を駆け巡ります。
桜の木の下で、私は、冷や汗ダラダラ流し、彼女の母は聞こえないふりをしていたあの光景、今でも思い出します。
先入観もなく、好きなものは好き、という次男のある意味天真爛漫、悪くいうと温室育ちというのは、私にとってはまさにプリティランドの王子様。
あんなに可愛いかったのに、人並み以上に悪ガキタイプのお兄ちゃんが鍛え上げ、今では、フツーの社会人。
桜の花が満開になると、子育てでジタバタしていた頃を懐かしく思い出します。
ちなみに、彼は今でも赤が好きなようです。